SKIN DISEASE皮膚疾患

犬のアトピー性皮膚炎(CAD)

犬の代表的な痒い皮膚病で、ハウスダストマイト、カビ、花粉などの環境中のアレルゲン(アレルギーの原因物質)に対して免疫が過剰反応して、特徴的な痒みや皮膚炎を起こす疾患。典型的には1歳~3歳くらいでの若齢の発症が多く、遺伝的にも柴犬、フレンチブルドッグ、シーズー、ウェスティ、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバーをはじめとしたさまざまな犬種で好発し、トイプードルなどの小型犬種でも多くみられます。
この他の、ノミアレルギー、疥癬、毛包虫(ニキビダニ)などの寄生虫、膿皮症(細菌)、マラセチア(真菌)などの感染症や、食物アレルギーなどの痒い皮膚病が併発していることも多いため、これらの評価と治療をまずキッチリとおこないます。さらにIgE検査やリンパ球反応試験などのアレルギーの原因についての血液検査を行うこともできますが、体質と環境中のアレルゲンはどうしようもないことも多いので、一般的なお掃除やシャンプーなどをしても改善のないものに関しては、必ずしも原因にこだわらずに積極的に痒みの管理をおこなって皮膚炎の悪循環を断ち切ることも重要です。
最近は副作用の少ない新しい選択肢が増え、治療のガイドラインが公表されたこともあり、より的確な治療が受けやすくなっています。(Olivry T. et al., 2015. Treatment of canine atopic dermatitis: 2015 updated guidelines from the International Committee on Allergic Diseases of Animals (ICADA))

ロキベトマブ(サイトポイント)

月1回の注射で、リンパ球から分泌されるIL-31という痒みの伝達物質をピンポイントでブロックする分子標的薬(イヌ化抗イヌIL-31モノクローナル抗体製剤)。安全性が高く、年齢などでの使用制限もなく、他の治療薬との併用も可能。

オクラシチニブ(アポキル錠)

IL-31などのサイトカインがJAKという経路で痒みや炎症を誘導するのをブロックする分子標的薬。成犬で使用可能で、安全性も高く、非常に使いやすく効果的な飲み薬。

分子標的薬

減感作療法 アレルミューンHDM

犬のアトピー性皮膚炎でよくアレルギーの原因になっているハウスダストマイトから抽出したDer f2という抗原タンパクを増量しながら6回を目安に注射して、体を徐々にアレルゲンに慣れさせる。速効性はなく、慢性期の体質改善の目的でおこなうが、うまくいけば根本的に治る可能性がある治療。その他の皮膚感染症や食物アレルギーを除外して、チリダニのIgE検査(Der f2, Der p2)が陽性の症例であることを確認してから投与する必要があるが、約7割で症状の改善・軽減がみられる。日本で作られた製品で、安全性も高いことが確認されている。

アレルミューン

ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)

痒みや皮膚の炎症・腫れなどをおさめるために用法・用量を守って使うとよいお薬ですが、長期間の投与は全身的な副作用のリスクなどもあり注意が必要。継続が必要な場合は他のお薬への変更や併用をしたり、局所で使えるローションなどの外用薬を上手に使っていくこともよい選択肢です。

免疫抑制剤(シクロスポリン)

アレルギーに関わるさまざまな免疫細胞に広く作用、過剰な反応を調節することで、重症・慢性のアトピー性皮膚炎の症例にも高い効果が期待できる。投与初期は嘔吐・下痢などの胃腸症状が副作用として出やすいので注意が必要ですが、長期的には安全性が確認された良いお薬で、カプセルの他、シロップ、粉など剤形が選べる。